Framework

Framework · 理論的枠組み

なぜ、この問い
辿り着いたか

I. 問いの起点

このフレームワークは、はじめから理論として存在していたわけではない。長い時間をかけて現場を歩き、人と関わり、問い続ける中で、私の中に少しずつ輪郭を持ちはじめたものだ。

起点は、ある人の死だった。長い命を生きたその人が、晩年に漏らした素直な小さな言葉が、ずっと私の中に残り続けた。生きることへの意欲が失われていくとき、人はどうなるのか。逆に、何があれば燃え続けられるのか。命が有限であることを知りながら、それでも前を向ける人とそうでない人の間には、何があるのか。

そして自分自身に引き寄せて想像した。大切な人をひとりずつ見送り、いつか深い孤独の中に立つかもしれない日のことを。そのとき、自分の中の火はまだ燃えているだろうか、と。私は、燃え尽きながら命が尽きる生き方をしたいと思った。だとすれば、そのエネルギーはどこから来て、どのように維持されるのか——それが、問いのはじまりだった。

なぜ、ある人は何かに向かって燃え続けられるのか。なぜ、同じ環境にいても、火が灯る人と灯らない人がいるのか。なぜ、かつて輝いていた人が、あるとき静かに消えてしまうのか。

そうした問いは、研究室の机ではなく、グラウンドで、教室で、地域の片隅で、そして自分自身の内側で生まれた。答えを探しながら考え続けていくうちに、私はある構造に辿り着いた。

人には、存在を持続させようとする内なる力がある。
その力は、関係性と場によって燃え、
あるいは静かに消えていく。

これが、私の出発点だった。

II. 先人たちとの邂逅

自分の中でこの構造が固まりはじめたとき、それを言葉にしようと文献を辿った。すると、驚くほど同じ場所に辿り着いている先人たちがいた。

それは、率直に言って、嬉しかった。自分が長い時間をかけて考えてきたことが、独立した問いとして誰かの研究に刻まれていた。先人たちへの敬意と、自分の思考への静かな自信が、同時に湧いてきた。

Core
Conatus · 内なる生の力
Spinoza, Ethics (1677)
→ 存在を持続しようとする力。すべての生命に宿る衝動。
Fuel · 関係性
自己決定理論 · 関係性欲求
Deci & Ryan (1985) / Grant (2008)
→ 他者とのつながりが、火を補充し再点火する。
Place · 場
実践共同体
Lave & Wenger (1991)
→ 場は、Conatusが機能するための容れ物であり環境条件。
Foundation · 基盤
生態学的システム論 · Well-being研究
Bronfenbrenner (1979) / Maslow (1943)
→ 身体・生活の安定が、すべての活動を支える土台となる。

これらの理論は、それぞれ異なる時代に、異なる問いから生まれた。しかし私の問いの中で、それらはひとつの構造として収束した。先人たちが別々に照らしてきたものが、同じ場所を指していたのだと気づいたとき、研究することの意味を、あらためて実感した。

III. これからへ

先人たちの仕事に辿り着いたことは、終点ではなく、出発点だ。彼らが照らした光の先に、まだ見えていない場所がある。そこを埋めていくことが、私たちの仕事だと思っている。

幸いなことに、私のそばにはゼミ生たちがいる。研究室に来てくれるゼミ生は、私にとって宝だ。それぞれが自分の問いを持ち、それぞれの場所で何かを見てきた人たちだ。私は、自分の思うがままに考え、突き進んでいい、と今では思える。そして、ゼミ生たちもそれぞれの問いで突き進んでほしい。

このフレームワークは、答えではなく、地図だ。「ここにいくつかの問いがある」という見取り図だ。その地図を手に、ゼミ生とともにフィールドへ出て、ピースを埋めていく。それが、S-Edu Lab の研究の姿でありたいと思っている。

🔥

自分の中から生まれた問いは、本物だ。
先人の仕事に敬意を払いながら、
自分の道を、自分の速度で、進んでいい。

S-Edu Lab · 持田研究室
Theoretical Structure · 理論構造図

この問いを、構造として示す

Bronfenbrenner の生態学的システム理論を骨格に、Conatus モデルの各要素を対応させた研究フレームワークの全体像。

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Research Framework · Theoretical Scope

Conatus × 生態学的システム理論

Bronfenbrenner (1979) の同心円構造を Conatus モデルに接合する
CHRONOSYSTEM 時間・ライフコース EXOSYSTEM 政策・制度・メディア MESOSYSTEM システム間の相互連関 🔥 FUEL 🏛 PLACE 家庭 Family 学校 School 地域 Community 活動 Activity MICROSYSTEM Conatus 内なる生の力 INDIVIDUAL 🌱 身体・生活の安定
Microsystem
直接的環境
個人が直接かかわる家庭・学校・地域・活動の場。相互作用は双方向。
Bronfenbrenner, 1979
Mesosystem ← FUEL / PLACE
関係性 × 場
ミクロシステム間の連関層。Conatusの燃料(関係性)と容れ物(場)が機能する水準。
SDT: Deci & Ryan, 1985 / Lave & Wenger, 1991
Exosystem
間接的環境
個人が直接参加しないが影響を受ける制度・政策・メディア・労働環境など。
Bronfenbrenner, 1979
Chronosystem
時間・ライフコース
幼児期 → 青年期 → 成人期 → 高齢期。時間的変化とライフイベントの次元。
Bronfenbrenner, 1986
Core — Conatus(内なる生の力)
🌱 Foundation: 身体・生活の安定
スピノザの概念に基づく「自己保存・存在持続の力」。生態学的システムの各層が、この内なる火を育て・燃やし続ける条件となる。基盤となる身体・生活の安定(Foundation)がすべての活動を支える土台。
Spinoza, Ethics (1677) / Maslow, 1943 / Well-being研究
Chronosystem — ライフコース軸
幼児期
動く喜び 関わりの原体験
青年期
自己形成 社会参加の学習
成人期
地域・仕事 余暇の統合
高齢期
Conatusの再燃 メゾ接続

双方向の矢印は、個人と各システムが相互に影響し合うことを示す(Bronfenbrenner, 1979)。メゾシステム層にConatusモデルのFUEL(関係性)PLACE(場)を位置づけることで、「内なる生の力がいかなる環境条件のもとで育まれるか」という研究問いの射程を示す。

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